お腹がすいている時にうなぎ屋の前を通るのは危険である。うなぎの焼ける香ばしいにおいと、甘辛い濃厚なたれのにおいが絶妙に混じりあって、安い定食かファストフードでお昼を済ませてしまおうと思っていた私の脳を直接刺激し、その暖簾をくぐるように命令させてしまう。お昼ごはんにうなぎはとても贅沢すぎるが、あの香りには勝てない。食べずにはいられない自分になってしまう。きっとあの香りには、人の脳を刺激する何かすごい成分が含まれているのだと思う。多分。それにしてもあのうなぎのたれ。よくテレビのグルメ番組で見るのだが、老舗のうなぎ屋で使っているたれは、先代からのたれだとか、何十年も継ぎ足している秘伝のたれと言われているが、そんなに長い間うなぎのたれというものは腐らないのだろうか。自宅で保管している焼き肉のたれなどは、たとえ冷蔵庫で保管していたとしても何十年もたてばきっとカビだらけになってしまうだろう。テレビやお店で見る限りではたれつぼは冷蔵庫にさえ保管されていないように思う。しかも、たれにつける前のうなぎはアツアツである。アツアツのうなぎをたれツボにつけるのだから、ツボの中のたれは雑菌達がよろこびそうな、ほどよい温度になっているはず。そしてたれにつけるという作業の途中、うなぎの身が少し削れてたれの中に入ってしまうこともあり、雑菌達のえさも豊富であろう。しかし、うなぎ屋で食中毒がおきたというニュースはこれまでほとんど聞いたことがない。やはり、あのたれの中には秘伝と言われる何かすごい成分が入っているにちがいない。多分。